はじめに

今回の記事はYouTubeでも紹介をしている内容になります。耳からでも勉強できるようにしていますので、ぜひ動画もご覧ください。

https://www.youtube.com/watch?v=1uTxofmajc8

今回の記事は主に骨転移のあるがんの患者さんを担当することのある理学療法士に向けて書いてある記事になります。

「骨転移って何?」「骨転移のある患者さんにリハを行うことは有用?」などのような内容を記載してありますので、まだ詳しく勉強をしたことがない初学者向けになっています。

最近、がんの患者さんの中で骨転移がある人が多いように感じているのですが、なかなか勉強ができていなくて・・・

そうだな骨転移がある患者さんって結構多いよな、ちょっとだけ一緒におさらいしておくとするか!

なぜ、骨転移を知っておくべきなのか?

まずはじめに、なぜ私たち理学療法士も骨転移について知っておくべきなのでしょうか。

それは動画の冒頭でも紹介しているように骨転移があることで患者さんのADLやQOLに大きく影響を与えるからなのです。

骨関連事象(SRE)という言葉を聞いたことがあるでしょうか?聞いたことがないという人は別で紹介をしている動画を見て勉強をしてくださいね。

SRE(骨関連事象)としてまとめられている疼痛や骨折/麻痺、高Ca血症が生じると患者さんの生活が大きく左右されます。放射線治療や手術などの整形外科的治療が必要な骨転移があることも、このSREに含まれます。

そのため骨転移は、理学療法士として患者さんと関わる中で注意して観察を行わなければならない大事な症状なのです。

例えば脊椎転移がある患者さんの離床や歩行訓練を行う際に、骨転移部位の病的骨折を起こしてしまうとそこに麻痺などが生じてしまいますので、理学療法士も必ず骨転移の基礎知識を持った上で、関わるべきなのです。

確かに骨転移のある患者さんって結構強い痛みがあることが多いから、どのように介入をしたら良いのか悩みますね。

骨転移とはどのようなものか

骨転移は字のごとく腫瘍細胞が骨に転移していることを言います。

元々、転移は肝臓や肺、脳、骨、皮膚などに多く発生します。その中でも骨転移はがん細胞が血流にのり、骨に到着・生着して増殖した状態のことを指します。

下の図が骨転移が完成するまで大まかな流れです。

骨は血流が豊富な組織であるため、骨転移は血流による転移と考えられています。

腫瘍細胞から遊離した後に、血管やリンパ管に浸潤して全身にまわります。そして骨まで辿りつくわけですが、がん細胞は骨に直接入り込む力はありません。

そこで賢いがん細胞は骨に元からある「破骨細胞」と「骨芽細胞」をうまく利用して骨の中に入り込むのです。

この骨転移の発生機序についての詳しい内容はコチラ
【骨転移の発生メカニズムについて】
https://onehealthlonglife.com/cancer-bone-metastasis-mechanism/

骨転移にも分類がある?

骨転移と一口に言っても、分類があります。

溶骨型は破骨細胞が優位に増殖し、骨吸収が更進した結果生じます。この溶骨型は骨強度が低いため骨折リスクが高いとされています。

造骨型は骨芽細胞が優位に増殖し幼若な骨組織や類骨組織を形成し、骨が形成が更進した結果生じます。突然の脊髄圧迫に注意が必要であることが示されています。

溶骨型と造骨型のどちらになるかは腫瘍細胞が産生する骨吸収促進因子と骨形成促進因子とのバランスに影響されます。

この他に混合型があります。臨床上、先ほどの2つにはっきりと区別されることは少なく、大部分がこの混合型に分類されます。

またここでやっかいなのが、治療によって溶骨型が造骨形に変化したりすることもあるようです。

どのタイプであるかは整形外科医やリハ医などにも確認をしてもらいながら判断すると良いでしょう。実際にリハビリで離床を行う前に確認をしておくことが望まれます。単純X線、CT、MRI、骨シンチなどで調べることが多いです。

骨転移の発生率と生存期間

臨床上問題となる骨転移の合併率は10~20%程度とされています。正確な頻度は不明です。多くの研究で頻度が算出されていますが、またはっきりとしたことが言えないのが現状です。

骨転移の好発部位は脊椎(胸椎12.9%、腰椎16.4%)骨盤16.7%、大腿骨18%)です。また転移を起こしやすいがんは肺がん、乳がん、前立腺がん、大腸がんの患者さんに多いとされています。

こちらは骨転移診断後の生存期間になります。疾患によって骨転移の診断後の生存期間の中央値に大きく差があることが分かるかと思います。

悪性リンパ腫であれば51.7ヶ月もありますが胃がんでは3.6ヶ月程度になっています。

一般的には予後が長い患者で骨転移が問題となりやすいことが分かっています。予後が長い患者さんはその分、骨転移によってADLやQOLに影響が出るため注意して関わる必要があります。

つまり入院中に関わっていた患者さんも自宅退院された後、生活を送る中で骨転移により生活を困難にさせられるということです。

確かに自宅退院された患者さんへもサポートする必要があるな。

骨転移のある患者さんに対するリハ

骨転移診療ガイドラインでは「骨転移のある患者にリハビリテーションは有効か?」というクリニカルクエスションがたてられています。その中ではSREなどのリスクに配慮しつつ骨転移患者のADLおよびQOLの維持、向上の観点からもリハビリテーションの実施が検討されているとあります。

またがんのリハビリテーション診療ガイドライン第2版では「骨転移によりADL、QOLが障害されている患者に対して、リハビリテーション治療(運動療法)を行うことは、行わない場合と比べて推奨されるか?」というクリニカルクエスションがたてられています。その中ではグレード2C、弱い推奨となっています。

実際には身体機能の改善を目指した運動療法、起居動作などで生じる疼痛を軽減するための動作指導、補装具療法やその他、環境調整などが勧められています。

しかしながら骨転移のある患者さんにこうしたリハビリテーションによる介入を行う時には特別な配慮が必要であります。それは先ほどSREについて少し紹介をしましたが、骨転移を有する患者さんは病的骨折や脊髄圧迫による麻痺を生じる危険性があるためです。

例えば放射線治療中・後の患者さんに運動療法を行う場合に注意をしていただきたいことの1つに骨折があります。

実は放射線治療後に骨折が生じることがあり、その出現時期は5~44ヶ月後(Oh W, et al.2008)とされています。放射線治療に伴う骨折はハザード比1.65~3.16と報告されています。

上図を見ていただくと分かるように子宮頸がん、直腸がんや前立腺がんなどで骨折の頻度は高く、その骨折部位は骨盤や腰椎、大腿骨になります。

このような患者さんを担当する時は骨折に注意をしながら介入する必要があります。

こうした放射線治療による骨折のリスクについてはYouTubeでも紹介をしていますので、こちらでも勉強してみてください。

そして骨転移に対して薬物療法や放射線治療が行われますが根治はほとんど不可能であると言われています。

そのため理学療法士をはじめとしたリハビリ専門職が骨転移がある中でどのように生活をした方が良いのかの生活・動作指導が重要となってくるのです。

さいごに

がんの患者さんが増加している現代では、骨転移がある患者さんと出会う機会も理学療法士も増えてくるものと思われます。

そのため理学療法士も骨転移について必ず知っておくべきです。

骨転移は根治がなかなか難しいものであるとされています。そのため骨転移を抱えなが生活を続ける患者さんが多いため、理学療法士などのリハビリ専門職が生活・動作指導をする必要性があります。

 

参考文献

骨転移診療ガイドライン
https://amzn.to/3gOShC4

がんのリハビリテーション診療ガイドライン第2版
https://amzn.to/3qLgAFz

がんのリハビリテーション(標準理学療法学・作業療法学・言語聴覚療法別刊)
https://amzn.to/37d60iU

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