はじめに

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がんのリハビリテーション診療ガイドライン(第2版)では造血幹細胞移植前の高齢者に対してフレイルやサルコペニアなどの高齢者総合機能評価を行うことについてのエビデンスレベルをグレード2C、弱い推奨としています。評価することが望ましいとする報告がある一方で害となる、つまり有害事象が発生するなどの問題はなかったようです。

弱い推奨、害はなく益は確実

エビデンスレベルをグレード2C、弱い推奨

がんのリハビリテーションガイドラインでは「血液腫瘍に対して造血幹細胞移植が行われる予定の高齢者に対して、造血幹細胞移植前に高齢者総合機能評価(サルコペニア・フレイルの評価を含む)を行うことは、行わない場合に比べて推奨されるか?」というCQを設けています。

それに対する回答は以下のようになっています。

血液腫瘍に対して造血幹細胞移植が行われる予定の高齢患者に対して、造血幹細胞移植前に高齢者総合機能評価(サルコペニア・フレイルの評価を含む)を行うことを提案する。

造血幹細胞移植前のCGA評価の生存期間や再発率、有害事象・治療毒性の予測に対する有用性については、質の高いランダム化比較試験がなく、観察研究のみの評価となるので、重要なアウトカムに対するエビデンスは弱いが、益と害のバランスは確実である(益の確実性が高い)。

高齢者に対する造血幹細胞移植

診断技術や治療法の発展により、造血幹細胞移植の適応対象もかなり高齢な者までになってきています。

自家造血幹細胞移植では80歳以上の高齢者に対する適応なども検討されています。

今後、国内でも急激に高齢者が増加する中で造血幹細胞移植を行う患者も増える可能性があります。

私も理学療法士としてがん患者と接する機会が非常に多くあります。

その中で一番難しいと感じることは、移植前処置や移植後の全身状態の悪化による長期間の寝たきり、筋萎縮、廃用症候群の発生です。

またこれが生じる傾向は、高齢であること、また元来の身体能力、体力が低いものが移植を行うとさらに悪化しやすいという経験があります。

実際にこの感覚はあっているのでしょうか。

生存期間・生存率・有害事象の予測

ガイドラインでは造血幹細胞移植前のフレイルやCGA評価の生存期間、再発率の予測に対する有用性について観察研究が5件、そのうち4件で生存期間、再発率の予測への有用性が認められたが、1件では生存期間の予測に対する有用性は認められなかったことからエビデンスはCとしたとしています。

同種造血幹細胞移植前にFried Frailty Indexでフレイルの評価を行うと、フレイルは無再発生存期間および全生存期間とは関連しないが、再発率とは関係した(Artz Aら,2011)と報告されています。

また研究内でフレイルは急性GVHDの発症率とは関連がなかったとしています。

その他に、Sorrorらは骨髄非破壊的前処置療法による同種造血幹細胞移植前のKPSが80%以下が無再発生存期間、死亡率と関連していると報告しています。

CGAの1領域の併存疾患が2年無再発生存期間、全生存期間と関連していたとする報告もあります。

以上のようなことから、造血幹細胞移植前のフレイルやCGA評価を行うことで生存期間や再発率、有害事象、治療毒性の予測が可能となり、治療方針の決定や治療中のケアの選択に活用できることが期待できるとされています。

さいごに

がんのリハビリテーションは外来では行うことができない状況にあり、退院後の患者のフォローアップがなかなか難しい状況にあります。

またCGAを行うにしても人員や時間をどのように捻出するかは各施設の状況によるため、CGAの使用も臨床適用性が十分ではないとガイドラインでもされています。

今後、高齢者が急増する中で血液腫瘍関連の患者層も高齢化する可能性があります。

高齢患者が増えるということは移植前から身体機能が十分ではない人もこれから増える可能性があります。

移植前・後から運動機能の維持・改善に関わるリハ職としてはこのあたりの評価を行う意義、効果検証などを行っていきたいと思います。

今回の記事の参考文献

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