はじめに

骨粗鬆症に対する運動療法は効果的であり、一定のエビデンスも蓄積されています。本ブログ内でもそれらについて触れているので骨粗鬆症の運動療法のエビデンス生活習慣病骨折リスクに対する運動療法のエビデンスを確認してください。

今回は、骨粗鬆症の運動療法の実際の方法についてエビデンスを元に解説をしていきます。

骨粗鬆症の運動療法で推奨される運動方法は?

骨粗鬆症の運動療法として推奨されるものは、ウォーキングなどの有酸素運動や体重がかかった状態での下肢筋力増強訓練です。

これらの運動が推奨される理由は、運動をすることで骨に対してメカニカルストレスがかかるからです。骨に対して体重などのメカニカルストレスがかかることで骨を造る細胞が活性化し骨形成が促進されるためです。

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版では骨粗鬆症に対して以下のような運動療法が推奨されています。

筋力増強訓練

背筋筋力増強訓練

Sinakiらは閉経後女性に対し、背筋の最大筋力の30%の負荷を背負って(背中に重錘などを載せて行う)行う背筋筋力増強訓練(1日10回を週5回)を2年間指導し、その10年後に再評価を行なった結果、対象群と比較して運動群では背筋筋力と腰椎骨密度は有意に高く、椎体骨折の発生率が低くなることを報告しています。

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版でもSinakiらが示した背筋筋力増強訓練は、椎体骨折が1つ以下の患者においては良い適応であるとしています。背筋運動を続けて行うことで椎体骨折の予防につながるとされています。

実際この運動は公益財団法人 骨粗鬆症財団が作成している保健指導ノートでも紹介されている運動になります。

実施方法:腹臥位で等尺性収縮で行うこと。可能であれば背中に最大筋力の30%程度の重錘を負荷すること

実施頻度:少なくとも1日10~20回 週5回

注意点:脊柱の変形が強くある方には実施は困難です。また腹臥位をとることが困難な方にも実施はしない方が良いでしょう。また新規椎体骨折がある場合や発生が疑われる場合は実施しない方が良いです。また息をこらえながらの運動は避けるべきでしょう。

スクワットによる下肢筋力増強訓練

筋力増強訓練は転倒予防に効果的であるという報告が多くあり、骨粗鬆症患者にとっては非常に重要な運動療法の1つです。

Polidoulisらは、荷重・筋力増強訓練により脛骨遠位海綿骨および骨幹部皮質骨骨密度(pQCTで測定)は、それぞれ0.87%、0.89%上昇するとしています。

その他、閉経後間もない女性を運動群と対照群に分け16年後まで追跡調査を行なった研究では、ジャンプなどのインパクトのある運動や筋力増強訓練を行なった運動群において腰椎と大腿骨近位部の経年的な骨密度の減少を有意に抑制していたとしています。(Kemmlerら,2016)PubMedサイト

筋力増強訓練の実施方法を語る際に、必ず議論されるのが「運動強度」です。最近では監視下であれば、かなり運動強度の高い方法を行なっても有害事象が出現することは低いとされています。

実際、閉経後の低骨密度女性(Tスコア<-1.0)を対象としたRCTでは、管理下で行う8ヶ月間の週2回、30分間の高強度レジスタンストレーニングとハイインパクトな運動は、自宅で行う低運動強度でのトレーニングよりも腰椎骨密度、大腿骨頚部骨密度、大腿骨頚部皮質骨厚を有意に増加させたとしています。(Watsonら,2018)PubMedサイト

このことから低骨密度の閉経後女性に対しても高強度の運動を行うことが可能であるとしていますが、より重度の骨粗鬆症患者であればこの運動方法をすぐに推奨できないということを念頭に置いておく必要があります。

実施方法:転倒リスクの高い高齢者や下肢筋力が弱い高齢者などはスクワットよりも椅子と机を用いる「立ち上がり訓練」が推奨されます。

スクワットはしゃがんだ際に膝蓋骨が足尖よりも前に出ないように注意をしながら、またknee-inなど膝関節と足関節のアライメントを意識させながら指導をする必要があります。

また変形性膝関節症などを既往にもち、疼痛を抱える患者には疼痛の範囲内で腰を落とす、膝を曲げてスクワットを行うように指導すべきです。過剰な運動はかえって疼痛を増強させてしまう可能性もあるため注意して下さい。

実施頻度:1セットあたり10~20回(対象者の筋力に合わせて)、2~3セット

筋力像増強を目指す場合、その運動が「楽に行える」レベルでは意味がありません。筋力増強を真剣に考えた場合、様々な原則を考慮する必要があります。

端的に言うと「一定の負荷量がないと意味がない」です。

実施頻度に幅を持たせているのはそのためです。運動強度に関する研究は様々なものが出ていますが、実臨床の場で全てが当てはまる訳ではありません。なぜなら、私たちが担当する患者は多くの疾患を抱えていたり、中には運動療法自体十分に行うことができない方もいるからです。

実臨床での運動強度として目安とすべきは「少ししんどい」「筋肉が少しだるい」と感じるレベルでの運動負荷でしょう。そのレベルに達するのが、10回なのか20回なのかは人によります。目の前の患者の体力、筋力を評価しながら回数設定を行う必要があります。

有酸素運動(ウォーキング)

有酸素運動によって腰椎骨密度が1.79%上昇し、ウォーキングにより腰椎および大腿骨近位部骨密度は、1.31%、0.92%上昇すると報告されています。(Bonaiutiら、2011)PubMedサイト

閉経後の女性で骨量が減少しているものや骨粗鬆症患者(49~75才:平均65才)において、ウォーキング(8000歩/日、3日以上/週、1年)は腰椎骨密度を1.71%上昇させると言われています。(Yamazakiら,2004)PubMedサイト

一般高齢者では自己管理がしやすいウォーキングが比較的転倒リスクも低く、大腿骨頚部の骨密度上昇も期待できるため推奨されていいます。(Martyn-Stら,2008)PubMedサイト

実施方法:1日6000~8000歩(10分≒1000歩)

実施頻度:週3回以上 1回あたり20分程度

注意点:膝や腰に痛みがある患者は急に歩数を増やさないように注意を促す必要があります。徐々に1日あたりの歩数を増やしながら継続して行うように勧めましょう。稀に急に歩数を増やす方がいらっしゃいますので注意が必要です。

立位バランス訓練

75才以上の高齢女性(開眼片足立位保持時間が15秒以下)が、バランス訓練(片足立位保持訓練:フラミンゴ療法1分×3セット/日、6ヶ月)を行うと、転倒発生率を低下させるとしている。フラミンゴ療法群14.2% vs 対照群20.7%であったと報告しています。(Sakamotoら,2013)PubMedサイト

その他、太極拳にもバランス改善効果があるとされ、転倒発生率の低下や骨密度の維持効果もあるという報告もあります。

骨粗鬆症患者の運動療法の注意点

これらの運動は日本整形外科学会が「ロコモティブシンドローム」に対する運動として「ロコモーショントレーニング(ロコトレ)」があり、同様の運動内容が推奨されています。

ただし運動療法を行うにあたって注意が必要です。

運動療法として体を動かすことは重要ですが、骨粗鬆症患者では体幹を過剰に屈曲させる、前傾させるような動作を行うことは極力控えるようにした方が良いです。「いつのまにか骨折」と言われるように、過剰な体幹屈曲、前傾により新規椎体骨折が発生する可能性があるためです。これらは患者に説明する必要があります。

さいごに

今回は骨粗鬆症に対する運動療法の実施方法としていつくかご紹介させていただきました。骨粗鬆症の予防や治療に運動療法は効果的であることは間違いありません。しかしながら、運動療法の効果が出現するにはかなりの時間を要するだけでなく、その効果はわずかなものです。骨粗鬆症患者には運動療法だけでは十分とは言えません。食事療法や薬物療法などと上手く組み合わせて行うことが重要です。

【参考文献・参考書籍】

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版

・医歯薬出版株式会社 CLINICAL REHABILITATION 10 2018 October   臨床リハ Vol.27 No.11

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