はじめに

過換気症候群の原因や症状、さらには対処方法について簡単にまとめています。その原因や症状はとても複雑ですが、自分の体のことや心のことを知ることは大事なことです。過呼吸などでお困りの方は少しでも良いので読んでみてください。

過換気症候群とは?

精神的に不安を感じたりや過度な緊張などにより過呼吸の状態となり、血液が正常よりもアルカリ性となることで様々な症状を出す状態です。

神経質な人、不安症な傾向のある人、緊張しやすい人などが不安やストレスを感じた時に起きやすいとされます。

そもそも換気とは、肺を膨らましたり縮ませたりして酸素を体の中に取り込んだり、体外に二酸化炭素を排出したりすることを言います。

通常、呼吸は無意識で行われ1分間に12回から20回程度行われています。呼吸回数が異常に増える(25回以上になる)ことを「頻呼吸」と言い、呼吸の深さが増加することを「過呼吸」と言いいます(呼吸数が増えることもある)。

過換気症候群の症状

必要以上に換気をしてしまうので、酸素が過剰に増えてしまい、反対に二酸化炭素をたくさんはき過ぎてしまうことになります。ヒトの血液はちょうど中性となるように維持されていますが、二酸化炭素が体内から出しすぎることで急激に血液がアルカリ性(呼吸性アルカローシス)になり、体内の細胞が正常に働くために必要な電解質のバランスが崩れることで、しびれ意識障害などの症状を二次的に来たすことがあります。

過換気症候群の原因とその特徴

肺や心臓の検査を行っても異常が認められないことが多いです。心臓や肺に何も問題がないにもかかわらず突然、息苦しく なって呼吸が深くまた速くなります。

過換気障害の主な原因は人間関係によるストレスや、労働環境が悪いことなどによる過度の精神的緊張があることが原因であることが多いです。多感な思春期においても人間関係のよるストレスから過換気となることが多いです。

女性が男性の2倍多く、25歳以下が約60%を占めると報告されています。

呼吸は自然と無意識でありかつ自動的に行われる(自律神経系によるもの)とわざと深呼吸をしたりするなど意識的に行う(随意神経系によるもの)の2つによって行われる特殊なものです。

この呼吸の2つの特殊さゆえに過換気症候群・過呼吸が生じる原因も2つに分けられます。

原因1 心身症としての過呼吸

心身症とは身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能障害が認められる病態をいう。ただし神経症やうつ病など、他の精神障害(うつ病など)に伴う身体症状は除外すると定義づけられています。

つまり、心身症とはストレスや不安などの心理的に影響を与えられるものによって体が生理的に反応し体に不調をきたしたことを言います。心身症の症状は多岐に及び、人によって様々です。

ストレスに対する考え方やストレス反応の仕方は人それぞれですので、心身症の疾患は体のあらゆる部位に現れるとされています。

代表的なものに「胃・十二指腸潰瘍」「慢性胃炎」「過敏性腸症候群」などがあります。下の図の一覧にあるように心身症に含まれるものの中では一見、ストレスが関係しなさそうなものも見られますが、ストレスとは身体の幅広いところに影響を及ぼすのです。

この心身症に過換気症候群を分類することには異論もあったりしているようです。これは呼吸は無意識で行われるだけではなく、自分の意識でもコントロールすることができるためだと言われているからなのです。詳しくは次の転換性障害に関係してきます。

ここで大事なことは、出現した身体の症状に特に意味はありません。つまりはストレスによって症状が出現するのですが、なぜ呼吸器系に症状が出たのか、消化器系に症状が出たのか、またそれが人によって出現場所が異なるのかに関連性はないとされています。ストレスと症状の出現場所に意味を見出せるような場合は、次に紹介している「転換性障害」によるものでしょう。

原因2 転換性障害としての過呼吸

転換性障害の診断基準は以下のようになっています。(DSM-Ⅵ-TR 要約)

心的葛藤を転移し、これを身体症状ことに運動性(手足が動かない麻痺)または感覚性(手足の疼痛や痺れ、感覚消失など)の症状に解消する試みとされています。

この転換性障害の中で注目したいのはこの無意識の「転換」ということです。これは自分の中に抑圧された思いや葛藤などが身体症状として表象・表現されていることをいいます。

例えば「とてもストレスを感じるものを見たくないと思った時に視力低下が起こる」であったり「現実から逃れることは困難だと強く感じた時に足に麻痺様の症状が出現し歩行困難となる」などがあげられます。

このような形で過呼吸で考えた場合はどうなるのでしょうか。

転換性障害では症状が出ている身体部位とその心理的ストレス要因となっているものとの関連性があるとしているので、上図のようになるようです。(参考文献:過呼吸症候群の精神病理 千葉大学教育学部研究紀要 第59巻229~234項(2011))

過呼吸によって空気的飢餓状態となって苦しめられますが、実はこのような場合は「対人関係による飢餓」が背景にあるそうです。これは呼吸が意識して行うことができることと関係があるようです。

呼吸は言葉を発する時にも行われます。この呼吸を意識してコントールができるから人間は自由に言葉を発することができるのです。

過呼吸となった場合は苦しくて意識してコントロールをすることができない感覚になります。呼吸のコントールを意識して行うことができないと、言葉を発したくても発せない状況になります。つまり「言いたい/話たいのに言えない」状況に近くなるわけです。

この対人関係による飢餓が自分の心の中で葛藤して大きくなった時、言葉を発したくても発することができなくなる、それを過呼吸という症状によって象徴的に表現して他者からの援助を無意識的に求めていると考えられるともされています。

パニック障害の過呼吸とは違うのか?

パニック障害とは症状が似通っている部分もあり違いが分かりにくいことも多いです。パニック障害はその発作が予期しない状態で突然起こることが重視されているところに特徴があります。またパニック発作はストレスとは無関係に起こることが多く、夜間の睡眠中でも起こることがあるとされています。そのためパニック障害はストレスや不安などの心因性によるものとは説明がしにくいとされています。ジャニーズ事務所に所属しているKing&Princeの岩崎さんもパニック障害で活動を休まれていますね。

パニック障害の症状の1つとして過呼吸が生じることはあります。しかしながら典型的な過換気症候群の場合は、症状の発生とストレスの関係が通常明らかであること、主症状が過呼吸であり、そのほかの随伴症状の多くは過呼吸の結果二次的に生じる生理的変化に基づくと考えられるためパニック障害による過呼吸とは分けて考えられることが多いようです。

また反対に過換気症候群にみられるけいれん様発作、無呼吸、意識消失などはパニック障害には通常みられないことから過換気症候群とパニック障害は同じではないとされています。

なぜ心理的なストレスや不安が関係するのか?

人間は毎日、心理的にも身体的にもストレスを与え続けられています。一般社会ではストレスを「仕事が終わらなくてストレスがたまる」「夫が家事や育児に協力的ではなくてストレスを感じる」と言うことが多いようですが、ストレスとはそもそももっと広い意味があります。

身体に感じる・感じないに関わらず人間は絶えずストレス(刺激を与えるものはストレッサーと言う)に晒されていると考えてください。お腹の中に入ってくる食べ物であっても身体に負担をかけるものですので、それはストレスになります。

ここで言うストレスはそういった日常的に意識をすることがないストレスよりも、もっと身体的にも精神的にも「これはストレスだ!」と感じるものがどのように影響するかを考えていきましょう。

ストレスを感じた時、人の体の中で何が起こるのか?

 

耳や目、手足などの五感で感じた全ての情報は神経を通り脳に伝えられます。

その中でも「これは不快!ストレスだ!」という情報は脳の中心部にある視床下部(ししょうかぶ)と言われる場所で伝達されます。

この視床下部は「内分泌系」「自律神経系」「免疫系」をコントロールする、いわば中枢機関です。

この視床下部には「痛い」「暑い」「しんどい」などの身体的ストレスの情報が集まります。その他の「好き/嫌い、恐怖、不安」などの心理的ストレスは扁桃体(へんとうたい)と呼ばれる場所に情報が伝わった後に先ほどの視床下部に伝わります。

この脳の仕組みによって人は何か出来事があった時(例えば人に叩かれた時)に「痛い」という感覚的側面だけで出来事を捉えるのではなく「痛っかったし、嫌だった」と感情的側面を加えて捉えることができるのです。

このシステムは通常は何の問題もなく働いています。

しかしながら過剰な状態でストレスを感じたり、それが逃れようのないものであった時、このシステムの1つである視床下部に支障が出始めるのです。

今回はこの視床下部の働きの1つでもある「自律神経系」に絞って紹介します。

過度なストレスが自律神経に及ぼす影響とは?

自律神経には2つの神経が含まれており、その1つが「交感神経」でありもう1つが「副交感神経」です。

これらの神経は様々な状況に対応するために常に働いてくれている神経になります。この神経が筋肉に伸びているから歩くことができるのです。

交感神経は特に緊急事態が発生した時に、迅速に対応が出来るように体にアクセルを押すような働きをし、副交感神経は体の休息や回復を促すためのブレーキとなるような働きをする神経です。

この2つ神経がバランス良く働いているので私たちは体内環境を維持(ホメオスタシス)できているのです。

慢性的なストレスに晒されると交感神経が常に活発状態になります。またその交感神経の過剰な活動を抑えるために副交感神経も必要以上に働くことになってしまいます。

その結果、神経の働きのバランスが崩れ「自律神経失調症」体の様々な場所へ影響を及ぼしてしまうのです。

その症状は、疲労感、不眠、食欲不振、便秘・下痢、胃痛、頭痛、動悸、倦怠感、首・肩のこりや痛み、めまい、生理不順など非常に様々です。例として胃痛、胃潰瘍を上げました。胃には交感神経も副交感神経も両方働きかける作用があるため、慢性的なストレス状態におかれると、そのバランスが崩れ胃痛が発生することになります。

 

これらの症状を放置しておくと、その症状がさらにストレスとなって、症状が悪化したりすることもあるため注意が必要です。

早くから身体の不調に気づき、ストレスの要因となることに対して対処をしたりリラックス出来る方法を探し実践すると良いです。

過換気症候群への対処方法

心身症や転換性障害、パニック障害のような精神疾患の1つに過呼吸・過換気症候群があるので、それらの精神疾患などがある方は、それらに対する治療が発症防止に有用なことがあります。

その他、過換気症候群への対処は①発作発生時と②非発作時とに分けて考えます。

①発作発生時

以前までは紙袋に息をはき自分がはいた空気を再度呼吸するペーパバック法が応急処置としてされていま した。これは現在では行わないので注意しましょう。この方法はかなり有名となってしまっているので、いまだに対処法の1つとして覚えている方々がいますので注意が必要です。

症状がひどく辛い場合には薬剤でコントロールをします。

②非発作時

発作時の治療とは異なり、過換気発作の誘因と なっている精神的な過度の緊張状態やストレスが ないかを話し合うことも治療のひとつになります。

明かに精神的な問題によるものだと考えられる場合には、精神科や心療内科への診察が勧められるでしょう。

ストレスとうまく付き合う方法

心身症としての影響が強い場合は自律神経系の安定を促すような方法としてリラクゼーション法や薬物療法が有効となる可能性が高いです。薬物療法については専門の心療内科などに通院する必要があります。

ここではストレスとうまく付き合う方法についてご紹介します。

歪んだ認知に気づく

ストレスの感じ方は人それぞれです。同じ出来事があっても「プラス」に捉える人もいれば「マイナス」に捉える人もいます。自分の考え方が極端なものになってしまっていないか確認してみましょう。この極端な考え方をしてしまうことを「認知の歪み」と言います。

例えば必要以上にマイナス思考で考えてしまってはいませんか?

「1回失敗しただけなのに、もう人生終わった(白黒で判断)」などのように極端にマイナスに考えてしまうことで、余計にストレスを大きくしてしまっていることがあります。

こうしたマイナス思考になってしまっていることをまずは客観的に捉え、その上で少しでもがプラス思考で物事を考えられるように、また行動出来るようにすると良いです。この認知の歪みを正していく治療法の1つに「認知行動療法」と言うものがあります。

考え方を少し変えると、これまでストレスと感じていた物事に対しても少しだけ前向きに捉えることができます。

プラス思考に変える方法

先の認知の歪みをプラスに変える方法をいくつか紹介します。

「〜しなければならない」という考え方を変える

これは、なんでも完璧にこなそうとして、それがうまくいかなかった時に自分はできない人間だ、ダメな人間だと考えてしまう傾向にある認知の歪みです。完璧主義で真面目な方に多いです。

ただし、全てが完璧にうまくいくとは限りませんし、そうでなくても良い場合もあります。もう少しだけ物事を楽にみることも大事でしょう。

自分の責任にする(自己責任化)

何事にも自分の責任のせいだとしてしまう傾向にあることをいいます。実際は自分ではないところに問題があったにも関わらず決めつけてしまうのです。

この場合は、もう少し起きた出来事を客観的に捉えられるようになると良いです。本当に自分だけの責任だったのか?他に何が原因はなかったのか?これは他人に責任を押し付けるのとは違います。

否定的なことだけを考える(心理的フィルター)

悪い部分だけをみてしまい、良い部分に対しては目を向けようとしないことを言います。批判されたり、失敗するといつまでもそのことをクヨクヨと考えてしまいます。

この場合は終わったことに対していつまでも囚われるのではなく、同じ失敗をしないようにしようと気持ちを切り替えることが重要です。また自分の良い面にも目を向けるようにすると良いです。

悪い予想ばかり考える(結論への飛躍)

はっきりとした根拠もないにも関わらず他人が自分のことを悪く言っていると考えてしまうことや、これから悪いことが起きてしまうと確信、決めつけてしまうことを言います。

この場合、他人から本当にそう思われているとは限らないと考えるようにする。また先のことをあれこれと過剰に考えても仕方がないという考え方も必要です。

リラックス出来る方法を探す

認知の歪みを変えることはすぐにはできません、少々時間のかかることでもあります。

常に出来事に対する自分の考え方(認知の歪み)を修正することばかりに意識しているのも大変ですので、時にはリラックス出来るような時間の過ごし方も大事です。

友達と会う、趣味に没頭する、旅行に行くなどすると良いです。少しストレスと感じることから距離を置いて過ごすことが良いです。

ただしこれもストレスの要因となるものから逃げるわけではなく、良い時間を過ごすことでまた前向きにプラス思考で物事(ストレス要因)に対して取り組めるになるための時間だと思ってください。

おわりに

過換気症候群の原因や症状につてまとめましたが、非常に複雑です。

「ストレスとなるようなこと」「ストレスの要因となることに対して自分がどう考えているか・行動しているか」を客観的に見つめ直すことから始めると良いです。

過呼吸症状に多く悩まされる場合は専門家に相談し、薬物療法を使用することもすすめられます。薬物に依存的になってしまうのではないかと心配する方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはありません。薬物療法を実施するだけではなく、専門家からのカウンセリングなども同時に受けられることが多いため、安心して療養に当たることができるでしょう。

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