はじめに

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糖尿病患者は健常人と比較してサルコペニアになりやすいとされています。今回、WWP1とKLF15というタンパクが糖尿病患者における筋肉の減少と関係性があると神戸大学より報告されました。これまでインスリン抵抗性やIGF-1などによる影響で語られることが多かった糖尿病の筋肉減少のメカニズムについてですが、新しい知見も出てきています。今回はWWP1とKLF15について少し触れたいと思います。

糖尿病患者の筋肉が減少するメカニズム

これまでの糖尿病患者の筋力低下のメカニズムのキーワードは以下の3つでした。

POINT

  • インスリン抵抗性
  • IGF-1
  • TNF-αなどの炎症性サイトカイン

糖尿病があると筋肉の質が低下し筋力低下がより進行すると言われており、糖尿病患者は健常人と比較して7~8年早くサルコペニアを発症する(Buford TWら,2010)とされています。

これは糖尿病の病態の1つである「インスリン抵抗性」が筋力低下、筋肉量低下と関係しているためです。

インスリン抵抗性は筋細胞における蛋白質合成の低下や筋細胞の分解に作用するとされているため、2型糖尿病患者では健常者と比較して蛋白質の取り込みが少なく、合成量も低下しているとされています。

またIGF-1(インスリン様成長因子-1)は筋細胞における蛋白質合成に重要な役割があります。このIGF-1の血中濃度が糖尿病患者では低下しているため高齢者糖尿病患者では骨格筋量低下や機能低下が生じます。

更に、TNF-αなどの炎症性サイトカインの産生の増加、テストステロン低下、ビタミンD低下などの内分泌異常、筋細胞の成長阻害因子であるマイオスタチンも糖尿病患者では増加しているため、これらが筋肉の減少と関係しているとされています。

筋肉が減少する新たなメカニズムの発見

今回、新しく解明された糖尿病患者の筋力低下のメカニズムのキーワードは以下の2つです。

POINT

  • KLF15
  • WWP1

最近になって、神戸大学が糖尿病により筋肉が減少するメカニズムを新たに解明したと報告しました。

糖尿病患者の血糖値の上昇が「WWP1」と「KLF15」という2つのタンパクの働きに影響を与えるため、筋肉が減少するとしています。

血糖上昇でKLF15が増える

KLF15は筋肉の分解や筋萎縮を起こす遺伝子発現を増加させるため、筋肉量の減少を引き越します。

KLF15は血糖の上昇により分解を抑制されるため、糖尿病患者では体内にKLF15が増加します。

この増加したKLF15が筋肉に蓄積されることが1つの要因だとしています。

またKLF15を取り除いた糖尿病のマウスでは筋肉量が減らなかった為、糖尿病で血糖の上昇によりKLF15が増加することが筋肉量の減少の原因だとしています。

KLF15の分解を促進するWWP1が減る

先ほども述べましたがKLF15は血糖値の上昇により分解を抑制され、筋肉内に蓄積されるようになります。

このKLF15の分解速度に関係しているのがWWP1(ユビキチンリカーゼ)というタンパクです。

ユビキチンという小さなタンパクが多量に結合したタンパクは分解速度が速くなるとされています。

今回の研究では得にWWP1がユビキチンをKLF15に結合させることが分りました。

正常な状態であればWWP1がKLF15の分解速度を速めているため、筋肉の減少が加速することはありません。

しかしながら血糖値が上昇するとWWP1の量が少なくなります。そうするとタンパクを分解するためのユビキチンがKLF15と十分に結合が出来なくなるためKLF15が増加してしまう結果となります。

そのためKLF15の分解が抑制されて、その結果筋肉が痩せるという事態になるようです。

糖尿病の病態の1つである血糖上昇がKLF15を増加させ筋肉の減少を加速させます。また普段からKLF15の分解を促進しているWWP1が血糖上昇により低下するため、結果的にKLF15が増加することになり筋力の減少が起こるということです。

さいごに

これまでインスリン抵抗性の影響やIGF-1などによる影響から糖尿病の筋肉の減少について語られることが多かったが、今回のようにWWP1やKLF15などのタンパクが影響することなど新しい知見も出てきています。

糖尿病患者における筋肉の減少は、ADL、QOLにも影響を及ぼします。

筋肉の減少により活動レベルが下がれば血糖コントロール不良を招き、他の合併症にも繋がる可能性があるため、糖尿病患者の筋肉を維持または増強させることは非常に大切です。

糖尿病患者の筋肉の減少のメカニズムが明らかとなってくることによって、多くの人が報われることを祈ります。

【参考文献】

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