はじめに             

WHOによると「骨粗鬆症とは、低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し、骨折の危険性が増大する疾患」とされています。

つまり骨粗鬆症は骨の病気であるため、骨を調べることで診断がつけられます。

しかしながら、診察室などで直接「骨」を調べることは困難です。骨粗鬆症の診療を行う際に重要なことは、まずは骨粗鬆症を疑うことができるかどうかです。この疑うことができる力があれば、実際に骨密度を調べてみよう、レントゲンをとって椎体骨折がないか調べてみようということができるのです。

今回は、その骨粗鬆症の診療の第1歩とも言える「骨粗鬆症を疑う力」をつけてもらいたいと思います。

骨粗鬆症の診断を下すためには何を診る必要があるのでしょうか。

骨粗鬆症の診断方法        

骨粗鬆症と言っても①原発性骨粗鬆症と②続発性骨粗鬆症に分けられます。今回は原発性骨粗鬆症の診断方法について解説をします。

骨粗鬆症は突然なるものではなく、徐々に進行するものであり、また症状がある訳ではないので生活の中では気づきません。

よって以下のような形で骨粗鬆症が診断されます。

図1)原発性骨粗鬆症の診断手順

医療面接、身体診察で確認すべきこと

医療面接では以下のようなことを問診すると良いとされています。

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医療面接でのポイント

  • 続発性骨粗鬆症や低骨量をきたす他の疾患の有無とその既往
  • 使用薬物
  • 骨粗鬆症性骨折の臨床的危険因子の有無
  • 生活習慣(カルシウムの摂取状況、運動・日常活動性、喫煙の有無、飲酒習慣など)
  • 家族歴(特に骨粗鬆症と骨折)
  • 女性の場合、閉経(年齢、自然や人工か)などについて聴取する

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続発性骨粗鬆症の原因となるような疾患には、糖尿病、成人での骨形成不全、長期にわたる未治療の甲状腺機能亢進症、慢性的な栄養失調あるいは吸収不良などが挙げられます。

脆弱骨折の既往は問診で聴くことはできますが、椎体骨折は無症候性であることがほとんどであり、2/3はそれに当たると言われているため、しっかりと診察を行う必要があります。

骨粗鬆症は生活習慣や遺伝的要因により多様な発症の仕方があります。遺伝的素因についてですが、母娘間では前腕骨骨密度で72%、大腿骨近位部骨密度で67%(Aeressens Jら,2000)と、骨密度の遺伝的素因による影響は約70%とかなり高い傾向にあると言われているため、必ず確認を行うべきです。

また骨折についての遺伝的素因も検討されています。両親のどちらかに骨折歴があると骨粗鬆症性骨折リスクは1.18倍、大腿骨近位部骨折リスクは1.49倍高くなるとしています。

またこの両親の骨折歴を大腿骨近位部骨折に限った場合、骨粗鬆症性骨折のリスクは1.54倍、大腿骨近位部骨折のリスクは2.27倍と更に高くなります。(Kanis JAら,2004)

これらのことから家族の骨粗鬆症歴、骨折歴の有無を確認することは非常に重要です。骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版では「特に両親の大腿骨近位部骨折歴に関しては丹念に情報を得る必要がある」としています。

診察で行う身体診察は以下のようなことを行うべきです。

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身体診察でのポイント

  • 身長(椎体骨折による身長低下を反映)
  • 体重の計測、BMIの算出
  • 脊柱の変形(椎体骨折を反映)の有無
  • 腰背痛の有無 など

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25才時の身長より4cm以上の身長低下がある場合には椎体骨折を罹患している可能性が高く、椎体骨折のリスクが2.8倍であることが報告されています。(Vogt TMら,2000)

その他、閉経後3年の身長低下と椎体骨折発生リスクの関係は、身長低下が2cm以上あると椎体骨折リスクが13.5倍、4cm以上では20.6倍になると報告(Siminoski Kら,2005)としています。

これらの結果から、身長が低下する、つまり円背になっているとほとんどのケースで骨粗鬆症と判定できるのか?

答えは否です。

脊柱変形だけでは診断を下すことはできません。

65才以上の610例の女性を対象とした研究(Ettinger Bら,1994)では、脊柱の変形の程度を測定し、骨密度との関連を調べていますが最も高度な変形を呈している上位10%のみの女性で骨密度が低下していたとしてます。また変形がありながら、椎体骨折がない場合もあるとしており、変形=椎体骨折=骨粗鬆症とはならないようです。

しかしながら脊柱の変形と骨粗鬆症を関連づけて行うことができる評価法もあります。

以下の図のa)では胸椎レベルでの椎体骨折が存在する可能性が高く、b)の方法で行い肋骨と骨盤の間に手を入れて2横指未満の場合に腰椎レベルでの椎体骨折が存在する可能性が高いとされています。

これらは比較的、簡単に行うことができるため身体評価を行う際に使えるものでしょう。

図2)脊柱変形の評価法

体重の軽い人と骨粗鬆症との関連は多くの研究で明らかにされています。

日本人の閉経後女性を調査したものでは、骨粗鬆症自己評価ツールのFOSTAを用いて骨粗鬆症の有病率を検討しています。FOSTA=(体重kgー年齢)×0.2が−4未満である高リスク群が全体の25%存在し、その内43~45%が骨粗鬆症であったと報告しています。(Fujiwara Sら,2001)

50kg以上・以下で調査した研究など体重別で調査した報告などもありますが、日本人の研究ではないことに注意しなければならないです。

骨粗鬆症の診断に便利なFRAX®︎

これらの内容を1つ1つ問診することは大変面倒です。

そこで骨粗鬆症の診断を行う際に便利なツールの1つにFRAX®︎があります。

FRAX®️骨折リスクを評価するツールであり、原発性骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版に治療開始基準に取り入れられています。

FRAX®︎は大腿骨近位部骨折と主要骨粗鬆症骨折(上腕骨近位部骨折、橈骨遠位端骨折、臨床椎体骨折)の10年間の発生確率を算出できます。

FRAX®️は骨密度や危険因子によって個人の骨折絶対リスクが評価できるものであり、インターネット上に無料で使用できるものがあります。

FRAX®️ 骨折リスク評価ツール

https://www.sheffield.ac.uk/FRAX/tool.aspx?lang=jp

FRAX®️で使われている因子は、年齢、性別、大腿骨頚部の骨密度(骨密度が計測できない場合はBMI)、既存骨折、両親の大腿骨近位部骨折歴、喫煙、飲酒、ステロイド薬の使用、関節リウマチ、続発性骨粗鬆症と、これれまで問診すべき内容であげたものが全て網羅されています。

FRAX®︎の10年間の主要骨粗鬆症性骨折確率15%以上であり、YAM70-80%の場合は、治療開始基準となっています。

ただし、75才以上の女性では90%以上がFRAX®️の骨折確率15%以上となるため、この基準は75才未満が対象であるとされています。

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版ではFRAX®️は日常診療や骨粗鬆症検診におけるスクリーニングに利用できる、また無症状の高齢者において潜在的な骨折高リスク者を判別するスクリーニング手段としても使用できるとしています。

また住民に対して行う骨粗鬆症検診にも使用できるでしょう。

おわりに

今回は骨粗鬆症の診断方法 医療面接編として何をすれば良いのかをご紹介してきました。短い診療時間の中で患者の骨粗鬆症についてまで気にする時間はないかもしれません。

骨粗鬆症は全ての始まりにもなります。たった1度の骨折によってADL、QOLが阻害され、さらに死亡率まで上昇させてしまうことは明らかです。

医療従事者がいかに目の前の患者の骨粗鬆症の可能性に気づくことができるかが重要となってきます。

普段の臨床場面で少しずつでも良いので、骨粗鬆症の診断や治療開始のための医療面接を実践してみてください。

【参考・引用資料】

・骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版

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