はじめに

 

「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」の中では、生活習慣病関連骨粗鬆症は続発性骨粗鬆症の代表例として挙げられています。

また最近では2型糖尿病をはじめとした生活習慣病の骨質の劣化による骨折リスク上昇などのエビデンスがたくさん集まるようになってきています。日本糖尿病学会・日本老年医学会編著「高齢者糖尿病治療ガイド2018」では「骨粗鬆症」が「糖尿病の重要な慢性合併症」であると記載されています。

2型糖尿病だけではなく、COPD(慢性閉塞性肺疾患)やCKD(慢性腎臓病)などの疾患では骨折リスクが上昇していることの見解も一致しています。

その他、肥満症、メタボリックシンドローム、脂質異常症、高血圧症、睡眠障害、サルコペニア、フレイル、認知症などは骨密度とは独立した骨折危険因子とされています。

このように最近では生活習慣病を中心とした続発性骨粗鬆症による骨折リスクの高まりについて議論されることが多くなっています。

今回は、この生活習慣病骨折リスクに対して運動療法が効果的であるのかについて「生活習慣病骨折リスクに関する診療ガイド2019年版」をもとに解説をしていきます。

運動療法の生活習慣病骨折リスクの軽減効果は?

 

生活習慣病骨折リスクにおける診療ガイド2019年版の運動療法の項目の冒頭には「糖尿病、COPD、高血圧症などを対象とした運動療法に関しては多くの報告があるが、運動がこれらの疾患における骨折発生率に及ぼす影響については明らかではない」と示されています。

 

骨粗鬆症の運動療法のエビデンスについてはこちらにまとめてありますので、興味のある方は読んでみてください。

 

長期間、背筋の筋力増強訓練を行うことが椎体骨折の発生率を低減させることができたと言う前向き研究(Sinakiら,2002)がある一方で、運動の椎体骨折の抑制は39%(OR=0.61,95%CI:0.23~1.64)であったとし、統計学上は有意な骨折発生抑制効果はなかった(Howeら,2011)としていう報告はあります。

運動療法による骨折リスクが軽減できたという報告はまだ十分ではないようです。特に生活習慣病骨折リスクに対する運動療法の効果については十分ではありません。

 

60~80才の糖尿病患者を対象とした12ヶ月間のRCTでは高強度のレジスタンス運動(1RMの60~80%)群で全身、腰椎、大腿骨頚部骨密度の維持効果が示された(Dalyら,2005)と報告しているものもありますが、骨折発生率の低減ができたという報告はありません。

 

しかしながら運動療法は生活習慣病自体を改善することに対してのエビデンスは十分に揃っています。2型糖尿病に対する運動療法が効果的であることは周知の事実です。

そのため、運動療法を行うことによって生活習慣病が改善されることで、骨への影響、骨折リスクの低減効果などが得られる可能性はあると考えられます。

 

骨折の有無をアウトカムとした骨折リスクの軽減効果は十分ではありませんが、生活習慣病気骨折リスクの軽減効果の可能性はあるかもしれません。

生活習慣病骨折リスクに対して運動療法は推奨されると今回の生活習慣病骨折リリスクに関する診療ガイド2019年版でも示されています。

運動療法の生活習慣病骨折リスクに対する転倒予防効果は?

 

本邦での高齢者の転倒による外傷頻度は54~70%程度(長谷川ら,2008)と報告されています。またこの中で実際に骨折をしてしまう例は6~12%程度と言われています。

一方、生活習慣病での転倒例の骨折発生頻度や骨折例における転倒率は明らかではないとされています。

生活習慣病関連疾患では前述したように骨質の劣化や骨密度の低下から骨粗鬆症のリスクが高くなっていることは明らかですが、実際のところどれぐらいの人が骨折しているかまではまだまわかっていないのです。

それもあってか生活習慣病を対象に転倒予防効果が明らかにされているわけではありません。生活習慣病骨折リスクは明らかであるが、実際の骨折頻度などがわかっていないため、それらに対する予防効果についても検討が難しい現状にあります。

 

糖尿病患者においてはHbA1cが高値でも低値でも転倒リスクが高まる(Johnstonら,2012)とされているため、生活習慣病の予防や改善だけでなく転倒予防に向けた介入が必要であることは言うまでもありません。

生活習慣病を有する高齢者でも地域在住高齢者や入院患者、施設入所者同様の転倒予防対策が必要であるとしています。

骨粗鬆症患者を対象にした28の研究の運動機能改善に関する報告では、歩行などの移動能力、バランス能力、下肢・体幹筋力、握力や身体機能の自己評価に有意な改善を認めた(Varahraら,2018)と報告しています。

多くの研究で、転倒予防のために推奨される運動は筋力増強訓練やバランス訓練、その他有酸素運動など多種類の運動を組み合わせて行うことであるとしています。

実際の転倒予防に向けた運動療法の方法についてはまた別記事でご紹介したいと思います。

おわりに

 

  • 多くの生活習慣病は骨折リスクと関連しており、2019年に日本骨粗鬆症学会 生活習慣病における骨折リスク評価委員会より「生活習慣病骨折リスクに関する診療ガイド2019年版」が発行された。
  • 運動療法は生活習慣病骨折リスクの軽減に効果的であるか不明だが、生活習慣病や骨粗鬆症患者に効果的であることは明確
  • 生活習慣病骨折リスクの軽減に推奨される運動療法は骨粗鬆症患者や生活習慣病患者に効果的であるとされている

【参考・引用文献】

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