はじめに

造血幹細胞移植をうける患者さんの多くは無菌室に入室をされます。無菌室管理中は活動範囲も限られ廃用症候群が生じやすくなるため、運動療法による介入が重要な時期となってきます。またこの時期の患者さんは多くの副作用や有害事象に苦しめられます。体調に応じて実施することが必要になるため理学療法士などの専門職の介入も重要になってくる時期です。今回の記事では無菌管理中のがんのリハビリテーションプログラムの考え方について紹介をしています。

今回の記事はYouTubeチャンネル「リハビリ・ラボ」でも紹介をしています!

造血幹細胞移植患者のスケジュール

無菌室管理になることの多い造血幹細胞移植患者のスケジュールをまずは見ていきましょう。

このような流れになっていて、多くの場合は移植前から運動療法による介入が行われます。このように造血幹細胞移植の患者さんは5つのステージに分けて運動療法の実施内容を考えることが多いです。

1)入院〜無菌室入室、2)無菌室入室〜前処置治療開始、3)前処置治療開始〜移植・生着、4)生着〜無菌室出室、5)無菌室出室〜退院の5つのステージに分けて考えていきます。

どのようなことを行っていけば良いのか、またどのようなことに注意をしながら行っていけば良いのか、1つずつ少し詳しく見ていきましょう。

1)入院〜無菌室入室

この時期は患者さんは移植による影響はまだ受けていないため、重度の副作用や有害事象によって苦しい状況にあるわけではありません。そのため比較的、運動療法が実施しやすい時期になります。この時期にいかに身体機能のアップ、筋力・持久力のアップをはかるかが大切になってきます。

2)無菌室入室〜前処置治療開始

この記事もまだ1)と同様な運動内容が実施可能です。この時、だんだんと移植手術が迫ってくる時期、また移植前処置が始まる時期が近づいてきている時期にあたるため患者さんが不安に感じたりするなど精神的に不安定になっているかもしれません。そのため患者さんの精神・心理状態をはかりながら実施をしていきましょう。

3)前処置治療開始〜移植・生着

この時期は患者さんの身体に変化が現れやすくなるため、運動療法の実施は慎重に行う必要があります。

移植前処置により重度の骨髄抑制や治療関連毒性を認めるようになりますので身体機能の低下や精神・心理的への負担が増大しています。そのため運動療法が実施できないような時が多々あります。

他職種で身体症状の変化に対して注意をし、情報共有をはかることが大切です。可能な限り、運動以外の時間における座位や立位といった抗重力姿勢を確保するように促すことも大切です。

4)生着〜無菌室出室

この時期は好中球の生着が確認され活動範囲の制限が解除されるため、クラス10000へ活動範囲が拡大されます。しかしながら生着をしていたとしても移植前処置による有害事象が残っていたり、移植後に生じる急性GVHDが出現しやすい時期でもあるため注意が必要です。

そのためバイタル測定や身体症状の変化に注意をしながら関わるということにかわりはありません。

徐々に落ち着いてきたら運動療法の実施量を上げていくことができる時期になってきます。

5)無菌室出室〜退院

この時期は無菌室からの退出は認めれているものの、免疫抑制剤やステロイド使用中であったり、急性GVHDの影響もあったりするためまだ感染対策には十分注意をしながら運動療法を行う必要があります。

この時期は自宅退院に向けたADL指導、確認などが大切になってきます。

造血幹細胞移植中・後の運動療法

このようにがんのリハビリテーション診療ガイドライン第2版においても、造血幹細胞移植中・後の患者に対するリハビリテーションの介入効果はエビデンスは低いながらも示されています。

ではどのような関わりをしていけば良いのでしょうか?

血液検査結果を見て考えよう

画一した運動療法のプログラムがあるわけではありません。ストレッチや筋力増強訓練、有酸素運動などを実施していくしかないわけですが、注意をして関わる必要があります。

それは2)無菌室入室〜前処置治療開始、3)前処置治療開始〜移植・生着のよな時期は患者さんの体調もあまり良くありませんし、血球減少が生じるためリハ中止基準に該当することがあるためです。

↓がんのリハビリテーションの中止基準とリスク管理の方法についてはこちらの記事またはYouTube動画をご覧ください。

がんのリハビリテーションの中止基準とリスク管理の方法

そのため、この時期の患者さんと運動療法を実施する場合は実施前に血液検査の結果をしっかりと確認しておく必要があります。

リハ中止基準に該当するかどうかの確認、またその場合の患者さんの自覚症状の有無、バイタルの測定などを行いながら進めるようにしましょう。

中止基準だけを見ていると、ほとんどのケースで該当してしまうため非常に判断に迷いますが、身体状況に応じて運動療法を行うことのリスク・ベネフィットを考えながら実施をしていきましょう。

連携し、自主訓練を活用しよう

なかなか理学療法士が訪室しても体調が優れないなどによってその時間に運動療法が実施できない場合も非常に多くあります。

そのため患者さんには自主訓練用紙をお渡しし、なるべく活動量を維持することを大切にしようと指導しておきましょう。臥床傾向が続くとあっという間に廃用が進行してしまいます。

私の場合、以下のような自主訓練用紙を早い段階で患者さんに渡しています。1)の時期から関われる時は担当開始時に渡しています。

ベッド上、座位、立位の3パターンで行うことができる内容を指導しています。

しかしながら治療の経過によっては赤血球数の低下による貧血、血小板数の低下による出血リスクなども出現するため、その際は立位での運動量を下げる、または中止するように状況に応じて追加で説明を行っています。

血液検査結果の確認は絶対必要です。

またこのような自主訓練用紙を壁に貼ることで医師や看護師にも見えるようにしておくなどの工夫も効果的です。

患者さん自身が自分1人では出来ない時に、周囲の方々のちょっとした声かけが大切になってきます。あまりしつこくなりすぎない程度に笑)

最後に

造血幹細胞移植をうける患者さんの身体症状は非常に変化しやすく、また重度であることがほとんどです。そのため運動療法を十分に行うこともあまり出来ないという状況が続くことだって良くあります。そうした時に、どのようなことなら出来そうかを考えることができるのは理学療法士をはじめとしてリハ専門職です。患者さんへの直接指導だけでなく、多職種とも連携をしながら患者さんのリハビリテーションを実施していきましょう。

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