はじめに

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糖尿病患者は実は骨折リスクが上昇しているため注意が必要です。血糖管理が十分にできていない方程、骨折リスクを高めるとされてます。糖尿病の骨粗鬆症リスクを高める要因の1つにAGEs(終末糖化産物)があります。このAGEsが骨のコラーゲン線維間に蓄積することで、骨微細構造の劣化、骨形成低下が生じる結果、骨粗鬆症リスクを高めるとされています。糖尿病患者の骨折リスクが高くなっていることは明らかですが、実際のところ糖尿病患者に対する治療介入がどれだけ骨折リスクの低減につながるのかは、今後の課題とされています。

糖尿病と骨粗鬆症の関係性

骨折リスク

糖尿病患者の多くは肥満体型であることから、骨密度は高いということが示されてきました。骨密度が高い為、骨折リスクが低いのではないかと考えてしまいがちでですが、実はそうではありません。

糖尿病患者ではそうでない者と比較して大腿骨近位部骨折リスクが1.38倍に上昇(Vestergaard Pら,2007)すると報告している他、

椎体骨折リスクは2.03倍に上昇する(Wang Jら,2016)などの報告もあります。

表)糖尿病患者における骨折リスク

上表では1型糖尿病では骨密度から推定される骨折リスク、またORも高い結果となっている為、骨密度に関連して骨折リスクが高いことが分かります。しかしながら2型糖尿病患者の場合、骨密度から推定される骨折リスクは0.77倍と低いにも関わらず実際の骨折リスクは1.38倍と高くなっているのであることに注意が必要です。

また先の肥満者においても骨密度で補正すると骨折リスクが高いことがメタ解析でも報告されています。糖尿病患者でも、痩せも肥満も骨密度とは独立して椎体骨折リスクが高い(Kanazawa Iら,2019)とされています。

糖尿病患者は脆弱性骨折を引き起こすリスクが約2倍程度上昇していると考えて良いでしょう。これまで腎症や神経障害、網膜症などが糖尿病の主な合併症として言われることが多かったですが、この骨折リスクを引き起こす骨粗鬆症も重大な糖尿病の合併症と言えます。

2型糖尿病は年齢、BMI、腰椎骨密度とは独立した既存椎体骨折の危険因子である(Yamamoto Mら,2009)としているのです。

またこういった脆弱性骨折は1度ではすみません。「骨折ドミノ」と言われるが1度の骨折が次の骨折も招くことになります。

椎体骨折が存在する場合の新規椎体骨折の相対リスクは4倍で、大腿骨近位部骨折リスクは3~5倍になる(Klotzbuecher CMら,2000)と報告されているため、たかが骨折では済まされないのです。

またHR-pQCTを用いた検討では、脆弱性骨折歴のある糖尿病患者では、骨折歴のない患者に比較して皮質骨の多孔化が認めれている(Patsch JMら2013)と報告していることからも、脆弱性骨折がある糖尿病患者に対して注意をして関わるべきなのです。

骨粗鬆症の原因

糖尿病患者では骨密度が高いにも関わらず、骨折する例が多くあります。これには骨密度ではなく、骨質の劣化が関係しているからだということがわかっています。

この骨質の劣化が生じる原因には終末糖化産物(advanced glycation end products;AGEs)が関係しています。

このAGEsは、食事などで過剰に摂取した糖とヒトのカラダを主に構成しているタンパク質が結びつくことで体内に生成される物質のことを言います。

このAGESは加齢や種々の健康に関わる物質であり、このAGEsの蓄積が進むと身体機能に様々な変化が生じます。骨のコラーゲン線維間にも蓄積され、骨芽細胞や骨細胞の機能低下にも関与します。

これによって骨微細構造の劣化、骨形成低下などの骨代謝回転低下が生じ骨粗相症になりやすくなるとされています。

リスク要因

糖尿病における骨折リスクと関連する因子は以下の3つとされている。

  1. 血糖管理
  2. 糖尿病罹病期間
  3. 抗糖尿病薬

HbA1cが7.5%以上であった者はそれ未満の糖尿病患者と比べて1.62倍骨折リスクが高いと報告しています(Oei Lら,2013)。この研究では血糖コントロール良好群(HbA1c7.5%未満)と非糖尿病群では有意差はみられなかったようです。

その他、65歳以上の2型糖尿病患者2万人を平均7.4年もの間の大腿骨近位部骨折発生を観察した研究では、骨折はぼぼHbA1cに依存性に増加する(Li CIら,2013)としています。

また重症低血糖を起こしたことのある患者は、その後の大腿骨頚部骨折リスクが1.71倍にもなることが報告されている(Hung YCら,2017)。

ここで注意が必要なことが1つあります。生活習慣病骨折リスクに関する診療ガイド2019年版にも記載されていますが、最近の高齢糖尿病患者においては重症低血糖が危惧される者に対してはHbA1cが高めに設定されることがあります。このような場合では骨折リスクが高くなっている可能性があることに注意する必要があるでしょう。

罹病期間についての報告もあり、10年以上では主要骨粗鬆症性骨折リスクが1.34倍、大腿骨近位部骨折が1.94倍に上昇する(Majumdar SRら,2016)としています。

臨床現場では糖尿病罹病期間が10年以上の方はたくさんいます。罹病期間が10年以上の患者には注意をして関わることが必要があります

インスリン治療薬を使用している患者は骨折リスクが高いとされている。これはインスリン治療薬使用者は、血糖管理が不良である、長期の罹病期間となっている、先にもあった低血糖リスクなどが患者の背景にあるからではないかと言われている。

チアゾリジン薬は直接的に骨の脆弱性に関わることが基礎研究で明らかとなっているようである為、特に注意する必要がある。

骨折リスクへの対策

2019年版のガイドラインによれば、一般臨床において糖尿病による骨折リスクを評価するツールはまだなく、患者個々の臨床的特徴に基づいて骨折リスクの高い患者を抽出し、積極的に骨粗鬆症治療薬を開始を考慮する必要があります。

図)2型糖尿病患者の骨折危険性に対する薬物療法

HbA1c高値が骨折リスク因子であることは明らかですが、HbA1cの改善、つまりは血糖コントロールの改善が骨折リスクを低下させるかどうかについては明らかにされていません。

また骨折予防のためのがHbA1cの目標値もはっきりとされていません。

糖尿病患者の骨折リスクが高くなっていることは明らかですが、実際のところ糖尿病患者に対する治療介入がどれだけ骨折リスクの低減につながるのかは、今後の課題とされています。

現時点では個別に診療を行い、リスクに応じて対応をするとことがすすめられています。

さいごに

糖尿病には数多くの合併症があり、それに対して対応がとられてきました。しかしながら糖尿病に対する骨粗鬆症への対応はまだ歴史が浅いです。

これから臨床現場で多くの医師や看護師、理学療法士などが糖尿病患者に対する骨粗鬆症への介入を行うことで新たな知見が出てくることを期待します。

 

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