はじめに

骨粗鬆症は患者のADLやQOLを低下させ、さらには死亡リスクを上昇させるため見過ごすことはできない重要な疾患である。

平成25年の国民基礎生活調査における要介護になった要因に脳卒中や認知症が多くをしめている。生活習慣病の代表である糖尿病も実は要介護リスクの1つに挙げられているのである。糖尿病は増悪すると、合併症も多数生じてくる疾患でああり、その合併症の1つに骨粗鬆症がある。

そうすると、転倒・骨折、関節疾患や糖尿病を合わせて考えると、実は骨粗鬆症が要介護発生リスクに大きく関与している可能性がある。

そして今回、注目したいのは要介護の要因として第3位にあげられている「高齢による衰弱」である。

高齢による衰弱の主な原因は最近注目されている「サルコペニア」である。

サルコペニアの状態になってしまうと運動を十分に行うことができず、活動度が低下する。ADLの低下、QOLが低下してより虚弱が進行することによって要支援、要介護になるのである。

実はこれら「サルコペニア」と「骨粗鬆症」さらには「糖尿病」は非常に密接した関係性にあるのだ。

今回はこれらの関係性についてまとめた。

糖代謝とサルコペニアの関係性

人間誰しも歳を重ねるわけであるが、人の筋肉量は30歳代から年間1~2%ずつ減少すると言われている。80歳代になると約30%の筋肉の減少がみられるとされている。

糖尿病があるとこの筋肉量の減少が進行すると言われているのである。

サルコペニアとは歩行速度や握力の低下だけでなく、筋肉量の減少が進行した状態のことであるが、そのサルコペニアと糖尿病とはどのような関係があるのだろうか。

糖尿病があると筋肉の質が低下し筋力低下がより進行すると言われており、糖尿病患者は健常人と比較して7~8年早くサルコペニアを発症するとされている(Buford TWら,2010)。

これは糖尿病の病態の1つであるインスリン抵抗性が筋力低下、筋肉量低下と関係しているためである。

インスリン抵抗性は筋細胞における蛋白質合成の低下や筋細胞の分解に作用するとされているため、2型糖尿病患者では健常者と比較して蛋白質の取り込みが少なく、合成量も低下しているとされている。

またIGF-1(インスリン様成長因子-1)は筋細胞における蛋白質合成に重要な役割をになっている。このIGF-1の血中濃度が糖尿病患者では低下していることによって高齢者糖尿病患者では骨格筋量低下や機能低下が生じるのである。

更に、TNF-αなどの炎症性サイトカインの産生の増加、テストステロン低下、ビタミンD低下などの内分泌異常、筋細胞の成長阻害因子であるマイオスタチンも糖尿病では増加しており、これらが関係している。

要介護の発生リスクに「高齢による衰弱」と「糖尿病」が分けて記載してあるが、臨床現場では厳密に分けることは難しいと感じる。

実際、長期にわたり糖尿病の療養を行なっている方々は筋肉の減少が既に生じており、活動度も低いことが多いからである。

サルコペニアと骨粗鬆症の関係性

生活習慣病骨折リスクに関する診療ガイド2019年版には骨格筋と骨代謝との相互関連(骨・筋関連)やサルコペニアと骨粗鬆症・骨折リスクとの関連性についてはこれまでの知見から示唆されている。

サルコペニアを認める者の骨粗鬆症合併率は57.8%であったのに対し、サルコペニアを認めない者の骨粗鬆症合併率は22.0%であり、更に年齢や性別、地域、BMIを調整し多重ロジスティック回帰分析を行なった結果、サルコペニアを認める者はそうでない者と比較して2.85倍の頻度で骨粗鬆症を合併していると報告している(Yoshimura N ら,2017)

更には骨粗鬆症を合併していると、約3倍の頻度でサルコペニアになりやすいとし、サルコペニアを認める者は約2倍の頻度で骨粗鬆症になりやすいということもわかっている。(Yoshimura N ら,2017)

このようにサルコペニアと骨粗鬆症との関連性は非常に強い。

この背景には加齢に伴うホルモンレベルの低下、ビタミンD不足、力学的負荷の減少などが関与しているとされている(Cederholm Tら,2013)。

サルコペニアに伴う筋量低下や筋力低下・バランス機能低下は転倒の発生に大きな影響を与えることは間違いないであろう。

またサルコペニアに伴い活動度が低下すれば骨への力学的負荷が減少し、骨密度の低下を招き骨粗鬆症になりうる。

全ては単独で生じるのではなく、一連の流れの中で生じてくるものなのである。

これを捉えやすくしてくれているのがフレイルサイクルである。

これがどこから生じるかは人それぞれである。

さいごに

一見、バラバラに見える「糖尿病」「サルコペニア」「骨粗鬆症」は実は非常に関連性が高い。

臨床現場では全て持ち合わせている患者が多くいることを経験する。また患者1人1人と話をしていくとフレイルサイクルが周り始めた経緯も様々である。

関連性を考えながら臨床に臨むことは非常に重要である。

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