はじめに

【この記事を1分間で紹介】

造血幹細胞移植中・後の患者さんへの運動療法による介入はできるだけ早くから行うことが推奨されています。運動療法は身体機能だけでなく精神機能・心理的機能に対しても効果が高く、エビデンスA~Bとなっています。またガイドラインでは運動療法を行うことで有害事象がでることは少ないため、有益となる確実性が高いとしています。

移植治療中・後のリハビリのエビデンスは?

がんのリハビリテーション診療ガイドラインによれば、血液腫瘍に対して造血幹細胞移植が行われた患者に対して、造血幹細胞移植中・後にリハビリテーション治療(運動療法)を行うことを推奨するレベルは【グレード1A 強い推奨】となっています。

移植治療中・後の患者さんの様子

  • 移植治療中より身体活動が低下して筋力や体力などの身体機能の低下が生じる
  • 不安や抑うつの精神機能の低下が生じる
  • 健康関連QOL、A D Lの低下が生じる

元からの疾患による影響だけでなく、移植前処置の治療関連毒性、移植後の合併症、また長期にわたるクリーンルームの滞在により患者さんの活動性は極端に低下するため廃用が生じやすくなります。それによってADL、QOLの低下が生じます。

運動療法の実施によりこれらの改善効果が期待されるため強く推奨されるようです。

造血幹細胞移植患者に自重やレジスタンスバンドを用いた上下肢・体幹筋への筋力増強訓練(Borg Scale 13)を入院中から退院後6週まで週3回実施することで、身体活動性が向上したと報告しています。

その他、筋力、運動耐用能の改善も得られることがわかっておりガイドライン上ではエビデンスは1Aとなっています。

実際、クリーンルームなどで行うことができる運動療法は限られます。
ベッド上で実施が可能なヒップアップやSLR、体幹トレーニング、施設環境にもよりますが自転車エルゴメーターによる有酸素運動などが基本となります。

効果的な運動負荷設定は?

筋力増強、運動機能、運動耐用能の改善目的に行う場合、運動負荷設定は年齢予測最大心拍数の60~75%で設定すると良いようです。

ガイドラインで示されている運動の実施内容のほとんどはストレッチ、エルゴメーター、トレッドミルなどの有酸素運動、筋力増強訓練を組み合わせて行い、30~40分/セッション、週4~6回を4~6週間継続して行うことを推奨しています。

他の疾患別リハにおける運動負荷設定と大きく変わらないようです。

運動療法の身体機能以外の効果とは?

筋力や運動耐用能の身体機能の向上だけでなく、精神・心理面、またQOLの向上に対しても効果的であることが示されています。(エビデンスA~B)

精神機能・心理面

【精神機能・心理面への効果エビデンスB】

治療中・後の患者さんは不安や抑うつになる方が非常に多いですが、これらの問題が運動療法によって解決する可能性も示されています。

ガイドラインでは精神機能・心理面へ改善効果としてエビデンスBとしています。Bとなった理由は、多くの研究で有酸素運動、筋力増強訓練が効果的であったことが示されていますが、それらの論文のアウトカム評価法にばらつきがあったためだとされています。

倦怠感やQOL

【倦怠感やQOLへの効果はエビデンスA】

メタアナリティクスやシステマティックレビューの論文数は少ないものの、筋力増強訓練や有酸素運動などからつくられた運動プログラムを行うことで倦怠感に対する有用性が認められています。これと同様にQOLの改善効果もエビデンスはAとされています。

運動療法を行うことによる有害事象の増加は?

有害事象の増加についてはエビデンスはCとされています。運動を行うことで睡眠障害や疼痛、嘔気の増加は認めなかったとされています。

これについては臨床の中での経験上、移植治療中・後の患者さんに対して運動療法を行いすぎることで倦怠感が出現することもあるように思います。運動療法の負荷設定は年齢予測最大心拍数の60~75%などで行っている研究がほどんとですが、患者さんによっては体調も日々違うので負荷設定は常に考えて介入をしないと有害事象を出現させてしまうことになると思います。

運動を行う時の注意点

白血球数や血小板、ヘモグロビン数に注意をしながら運動療法を行う必要があります。

ヘモグロビン10g/dL以下では運動時の頻脈や低酸素血症、血圧低下などに注意が必要です。また血小板が10,000μl以下の場合、過剰な運動負荷を加えると筋肉内や関節内で出血をきたす危険性があるため注意すべきです。

移植後はGVHDや血栓性微小血管障害症(TMA)、肝中心静脈閉塞症(VOD)に注意をすべきです。

注意して観察をすべきこと

  • 急性GVHD:発熱に続く皮疹、水溶性下痢、黄疸
  • TMA:血小板減少、ヘモグロビン低下、突発性のLDH上昇
  • VOD:右季肋部痛、黄疸、腹水貯留、肝逸脱酵素、血清ビリルビン上昇

さいごに

造血幹細胞移植中・後の患者さんに対する運動療法は効果的であると言えます。運動療法は有酸素運動と筋力増強訓練、ストレッチなどを組み合わせて30~40分/セッション、週4~6回を4~6週間継続して行うことを推奨しています。運動療法を行うことによる有害事象の発生についてのエビデンスはCとなっていますが、患者さんの日々の体調に合わせて行った方が良いことは間違いないでしょう。

この記事の参考文献


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