はじめに

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がんの患者さんと関わる中で知っておくべきこととして発熱性好中球減少症(FN)があります。これは抗がん薬などによって骨髄抑制、造血幹細胞の障害により好中球が減少してしまった結果、発熱をともなう感染症になっていることを言います。FNを放置しておくと敗血症になるなど、死亡率を高めることになってしまうため発見した場合は早急に対応する必要があります。またFNの発症リスク要因も明らかになっているため、予め患者ごとにFN発症のリスク評価を行っておくことも必要です。

発熱性好中球減少症(FN)とは

発熱性好中球減少症の定義

好中球が500/μL未満、または現在1,000/μL未満で48時間以内に500/μL未満に減少すると予測される状態で、かつ腋窩温37.5℃(口腔内38.0℃以上)の発熱を生じた場合。

FNは抗がん薬などの化学療法の経過中に起こることが多く、発熱をともなう好中球減少をきたします。

好中球減少時の感染症を放置していると、48時間以内に50%が敗血症となり死亡すると言われているため、注意が必要です。迅速な対応が求められます。

また患者さんの臨床的予後に関与する感染症関連の合併症や患者の状態にはFN が含まれています。それほどにFNは大きな影響を与える可能性のあるものなのです。

FNの原因

好中球の減少

好中球は本来、体内に進入してきた細菌を殺菌する働きがあります。つまり好中球は細菌感染を行うのに重要な働きを常にしてくれているのです。

しかしながら、この好中球が抗がん薬の投与などによって骨髄抑制、造血幹細胞に障害が引き起こされると、成熟した好中球が死滅、または新たに作られてにくくなり補完することもできなくなってしまいます。

好中球の寿命は血球の中でも8時間と特に早いため、骨髄抑制による影響も好中球の減少が早くにみられます。(その他血球の寿命:赤血球120日、血小板7日)
レジメンによっても異なりますが、だいたい10日前後で最低のnaidir(ネイダー)になります。

好中球が体内から減少してしまうことによって感染がしやすくなってしまうのです。

好中球(/μL) 感染リスク
1,000~1,500 軽度のリスク
500~1,000 中等度のリスク(感染の頻度が高くなる)
100~500 重度のリスク(重症感染症が増加する)
100以下 致命的感染症(敗血症)を起こしやすくなる

好中球の減少の程度によって感染リスクは変わります。
好中球が500/μl以下で感染症の発症率が上昇しはじめます。
好中球減少期間週間における好中球数と重症感染症発症率を検討した研究では、好中球の減少が大きいものほど重症感染症発症率が高いことが報告されています。
好中球数が100/μl以下の状態が1週間続くと重症感染症発症率は28%にもなります。

細菌感染

好中球が減少してしまうことによって感染しやすくなります。FNが起こってしまう原因の菌は数多くあります。

FNの起因菌

  • グラム陰性菌(緑膿菌、大腸菌)
  • グラム陽性菌(ブドウ球菌、肺炎球菌)

ただし、微生物学的に、臨床的に感染が確認される割合は50%程度で、明らかな感染巣は確認できないことが多いとされています。

FNのリスク要因

FN 発症および重症化リスクは,疾患,レジメン,患者側のリスク因子などにより異なります。
初回の治療前のFNリスク評価としてASCOがあり、これらの要因をもつものはFNの発症リスクが高いとされています。

疾患としてはリンパ腫,肺小細胞がんの化学療法において発症リスクが高く,白血病では白血病細胞の根絶を目指す強力な化学療法を行うためFN は必発に近いとされています。
また治療強度を高めたレジメンではFN が発症率は高いとされています。

難治性のがん,慢性閉塞性肺疾患や臓器障害を有する患者,高齢者,急性骨髄性白血病の寛解導入療法や造血幹細胞移植の前処置治療を受ける患者は,FN の高リスク患者となります。

ASCOでも重篤な合併症が含まれていますが、重篤な合併症とは以下のようなものを指します。

低血圧
食事摂取が困難な口腔粘膜の炎症や重篤な下痢による消化管粘膜障害
神経症状
低酸素血症を伴う肺浸潤や慢性肺疾患
肝機能障害(正常値の5 倍を超える高トランスアミナーゼ血症)
腎機能障害(クレアチニンクリアランス<30 mL/min)

これらの重篤な合併症があるとFNの発症率が高くなるとされているので、臨床現場でも注意して関わる必要があります。

その他、FNの発症率などについてはレジメンによって異なりますので、日本癌治療学会のがん診療ガイドラインを参考にすると良いです。

理学療法士も注意して関わる

がんのリハビリテーションが始まってしばらくたちます。理学療法士もきっとがんの患者さんと関わる機会が増えているはずです。
理学療法士が患者さんに提供する運動療法などは身体的に負担のかけるものが多いでしょう。
自分が担当する患者さんがFNのリスクが高いのかどうかを予め知っておくことが必要です。毎日の臨床現場では血液検査結果や発熱などを確認した上で運動療法の可否を判定することが求められます。

さいごに

がんの患者さんと関わる中でFNは必ず注意して関わるべきものの1つです。患者さんの血液検査結果や検温、血圧などのバイタル、その他自覚症状などの観察をしっかりと行うことが重要です。日々の仕事の中でたくさんの患者さんと接しますが、その一人一人の状態の変化を見落とさず関われるようになりましょう。

今回の記事の参考文献

がんのリハビリテーション
こちらはあらゆるがんに対するリハビリテーションのことを記載されてある本です。がんの患者さんと運動療法を行うにあたっての注意点なども明確に記載されてあるので臨床で非常に役にたちました。
がん治療薬まるわかりBOOK
こちらは抗がん剤のレジメンが掲載されていたり、1つ1つの薬剤の効果と副作用、ケアのポイントなどが非常に端的に分かりやすくまとめられてある本です。私の病院の看護師さんたちは必ず持っていると聞き、即購入をしましたが非常に良い本です。
がんのリハビリテーション診療ガイドライン
こちらはがんのリハビリテーションについてエビデンスなどの解説をクリニカルクエスチョンに基づいて説明をしてくれています。がんのリハビリテーションに関わる方なら必ず読んでおくべき1冊でしょう。

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