はじめに

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造血幹細胞移植で使用される幹細胞には骨髄、末梢血幹細胞、臍帯血があります。この移植される造血幹細胞のドナーとなる人は大きく分けて血縁者や非血縁者(他人)です。造血幹細胞移植を受ける約1週間前から大量化学療法、全身放射線治療による「移植前処置」が行われます。移植前処置はとてもきつい治療であるため副作用が多く出ます。移植した細胞が生着するまでに14~28日間程度かかります。移植後は血球減少、感染症へのリスク、GVHDなどが出現するリスクが高いため注意が必要です。

造血幹細胞移植の種類と方法

POINT

  • 自家造血細胞移植と同種造血幹細胞移植の2つの方法がある
  • 移植する細胞は「末梢血幹細胞移植」「骨髄移植」「臍帯血移植」の3種類ある
  • 移植する細胞はHLAタイプの適合したものが選ばれる

移植の方法は2つ

造血幹細胞移植は、よく行われる抗がん剤や放射線治療だけでは治すのが難しい血液がんの患者さんに対して行われます。
患者さん本人の造血幹細胞を用いる移植を「自家造血細胞移植」といい、健康なドナーから提供された造血幹細胞を用いる移植を「同種造血幹細胞」といいます。
ドナーは兄弟姉妹などの血縁者やその他に血の繋がった血縁者から選ばれる方法と、骨髄バンクや臍帯血バンクなど非血縁者ドナーから選ばれる方法があります。

ドナーからの細胞が適合するかどうかは免疫細胞が自分と他者を区別するための印となる「HLA(ヒト白血球抗原)」のタイプが適合した「HLA適合ドナー」が選ばれますが、適合者見つからなかった場合は、父・母のいずれかのHLAのみが一致した「HLA半合致ドナー」からの「ハプロ移植」もあります。

【サイト内別記事:HLAとは?骨髄ドナーがなかなか見つからない理由

自家造血幹細胞移植の場合、移植片対宿主病(GVHD)のリスクがないのが利点である一方で、移植片対白血病効果(GVL効果)は期待できないです。

移植する造血幹細胞の種類は3つ

 患者に対して移植する造血幹細胞は3種類あります。
「骨髄移植」「末梢血幹細胞移植」「臍帯血移植」です。

①骨髄移植
骨髄にある造血細胞を採取して移植する方法です。骨髄液は腸骨から採取されます。採取された細胞は静脈へ点滴で注入します。
②末梢血幹細胞移植
血液中にある造血幹細胞を採取して移植する方法です。本来は造血幹細胞は骨髄に存在し、血液中にはない為、ドナーにGCS-F(白血球を増やす薬)を投与した後、骨髄から血液中に流れ出した造血幹細胞を採取します。採取された細胞は静脈へ点滴で注入します。
③臍帯血移植
胎児と母親を結ぶ臍帯と胎盤に含まれる胎児由来の臍帯血と呼ばれる血液に造血幹細胞が多く含まれています。この臍帯血の提供に同意した妊産婦がドナーになります。分娩後に臍帯血を採取して、これに含まれる造血幹細胞を採取します。

移植前処置とは?

POINT

  • 移植当日の1週間前から行われる。
  • 処置の方法にも骨髄破壊的移植(フル移植)と骨髄非破壊的移植(ミニ移植)がある。
  • 大量化学療法と全身放射線治療を組み合わせた治療を行う。
  • 血球減少、易感染性、嘔吐、下痢などの福作用が出る。

この移植前処置を行う目的は主に3つあります。腫瘍細胞を減少させること、患者さんの免疫細胞をしっかりと抑制し幹細胞を生着しやすい状態にすること、移植したドナー幹細胞の拒絶を予防することです。

移植前処置とは

移植前処置には強力な移植前処置となる「骨髄破壊的移植(フル移植)」とフル移植よりも強度の弱い「移植前処置(ミニ移植)」の2つあります。
フル移植は強力な処置ですので、副作用なども強く出るため全ての方に実施はできません。50~55歳で全身状態が良い方に適応となります。
ミニ移植は移植片対白血病効果(GV L効果:ドナーのリンパ球が患者さんの腫瘍細胞を攻撃すること)が期待されます。しかしながらフル移植と比べて効果が弱いため、最初はドナー由来の移植片への拒絶が増加する可能性があります。ミニ移植では副作用や合併症は少ないため、高齢者、臓器障害がある方でも実施が可能な場合もあります。
この移植前処置では強い副作用が生じます。特に白血球数が低下するため感染しやすくなります。その他、貧血、口内炎、脱毛、下痢、嘔吐、食欲不振なども多く出現してきます。貧血によって動悸、息切れ、倦怠感なども生じます。
移植後の経過にもよりますが入院治療が長くなることも多くありますので、移植前後は積極的なリハビリ(運動療法など)、しっかりと栄養摂取を行うことが必要です。そうすることで体力の維持・向上がはかられ、結果的には早期退院へと繋がります。

生着までには2~4週間はかかる 

好中球数が500/μL以上となって、これが3日以上続くことを「生着」と言います。
移植する細胞によって生着時期がやや異なります。
生着に至るまでに末梢血幹細胞移植では10~14日程度、骨髄移植では2~3週間程度、臍帯血移植は3~4週間程度かかります。生着した幹細胞は、骨髄で血液細胞を作り出します。
これほど時間がかかるのにも理由があります。移植した幹細胞が骨髄で白血球を作りだすのには時間がかかるためです。この期間を極力短くするためにG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)という薬を使います。これは白血球を増やす効果がある薬です。血液型は長期的にはドナー型に変わります。

移植・生着後も注意が必要

 造血幹細胞移植後は様々な副作用や合併症が生じます。
移植後は移植前処置と同様に血球減少に関連した感染症、貧血、易出血や粘膜障害が生じます。
造血幹細胞移植は白血球生着後も白血球数や抵抗力は十分ではないため感染しやすい期間が続くため注意が必要です。
真菌、単純ヘルペスウィルス、サイトメガロウィルス、水痘、帯状疱疹ウィルス、アデノウィルスなどが感染症となる主な病原体です。

同種移植の場合、移植片対宿主病(GVHD)などの免疫・感染症に注意する必要があります。
GVHDの移植片に含まれるリンパ球による宿主に対する免疫反応のことです。
GVHDは移植後100日以内か、それ以以降で急性と慢性に分けられます。
GVHDの予防や治療のために免疫抑制剤やステロイド剤を投与するため、更に免疫機能が低下してしまいます。
慢性GVHDは移植の2年後においても発症率は37%と高く、発症リスクは女性ドナーから男性患者への移植、また抹消血幹細胞移植、急性GVHDの発症などであるとされています。

さいごに

造血幹細胞移植では移植前処置、移植後も副作用やGVHDなどに悩まされることが多いです。
それによって長期間の安静臥床、全身持久力・筋力なども低下する恐れがあるためリハビリテーションなどの介入も必要です。
造血幹細胞移植を知り、適切な対応をとれるようにしておくことが大切です。
適切な対応をとることができれば、患者の不要な心身の苦痛を避けることができ、それはADLやQOLの維持につながると思います。

今回の記事の参考文献

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