はじめに

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腫瘍崩壊症候群(tumor lysis syndrome:TLS)とは急速に腫瘍細胞が死滅した結果、血中に細胞内のカリウム・リン・核酸が急速に放出されることによって起こる代謝のバランス異常のことであり、生命を脅かす可能性があるため、見つけた場合は早急に対応をする必要があります。TLSの発症リスクが高い人は血液検査結果、尿量などしっかりとモニタリングする必要があります。

今回の内容はYouTubeでも紹介をしていますので、耳だけでも勉強が可能です。

腫瘍崩壊症候群とは

腫瘍崩壊症候群の定義

急速に腫瘍細胞が死滅した結果、血中に細胞内のカリウム・リン・核酸が急速に放出されることによって起こる代謝のバランス異常のことであり、生命を脅かす可能性がある。

細胞内から放出された結果、高カリウム血症、高リン血症、低カルシウム血症、高尿酸血症が起こります。
これによって不整脈や神経筋症状、腎機能障害などが誘発されて生命に危険を及ぼすことになります。
TLSはCario-Bishopの評価基準により以下のような2つに分類されます。
POINT

  • Laboratory TLS:検査データ上はTLSと判断されても治療は必要ない
  • Clinical TLS:積極的な治療が必要であり、厳格な管理と治療が必要
Laboratory TLS

がん化学療法を開始する3日前から開始後7日間の間に2つあるいはそれ異常の症状がある場合

  • 尿酸≧8mg/dLあるいは基準値の25%以上の増加
  • カリウム≧6mEq/Lあるいは基準値の25%以上の増加
  • リン≧6.5mg/dLあるいは基準値の25%以上の増加
  • カルシウム≦7mg/dLあるいは基準値の25%以上の増加
Clinical TLS

Laboratory TLSに加えて以下の症状を1つ以上認める

  • クレアチニン(基準値上限の1.5倍以上)
  • 不整脈または心臓の停止
  • 痙攣

TLSのリスクの高い疾患

TLSを起こしやすい疾患には造血器腫瘍に関連した疾患が多いとされています。非ホジキンリンパ腫では、バーキットリンパ腫、B細胞性急性リンパ性白血病(B-ALL)、急性リンパ性白血病(ALL)では白血球が10万/μl以上と多い患者、急性骨髄性白血病(AML)では白血球数5万/μl以上がTLSのハイリスク疾患であるとされています。

TLSによる腎機能障害

腫瘍細胞が大量に崩壊するときに、腫瘍細胞からは遺伝子を形成している物質である核酸が大量に放出されます。
核酸は尿酸に分解されて腎臓より尿中に排泄されるのが普通ですが、TLSでは核酸が大量に放出されるので、大量の尿酸が体内で作られます。
この尿酸は結晶化しやすい物質であるため、尿の中の尿酸が高濃度になると、尿中で結晶化されます。この尿酸の結晶が尿細管や尿管という尿の通る管で詰まることによって、尿が排出されにくくなり急性腎不全となり、場合によっては一時的に人工透析が必要になるとされています。

TLSへの標準的ケア

POINT

TLSの症状などは電解質の代謝異常がかなり進行してから現れることが多いです。そのため、特に治療開始後3日間は注意深くモニタリングを行い、管理する必要があります。

飲水・補液

補液などで水分を多く摂ると、尿が薄められ、尿酸が結晶化の予防になります。化学療法を開始する24~48時間ごろより持続点滴を行い利尿を行います。

利尿薬 尿量が確保できていない場合にはループ利尿薬やマンニトールを使用します。尿量100mL/m2/時、尿比重≦1.010を目安とします。
尿酸分解酵素薬

薬は尿酸を分解することで血液中の尿酸を減少させるとしてラスブリカーゼが使用されます。化学療法開始4~24時間前に投与を開始します。最大7日間の投与。

尿酸生成阻害薬 化学療法を開始する2~3日前より尿酸の酸性を阻害する働きのあるアロプリノール、フェブキソスタットが使用されます。

ラスブリカーゼは尿酸を水溶性のアラントインという化合物と二酸化炭素と過酸化水素に代謝する作用を持ちます。アラントインはpH値にかかわらず高い水溶性であるため、ラスブリカーゼによって生成されたアラントインは尿に溶けて排泄されるようになります。ここで不思議なのが、哺乳類の多くはこの尿酸→アラントインを触媒するラスブリカーゼを持っていますが、なぜか人間は持っていないのです。

モニタリングすべき内容

検査データの結果

治療開始 6 時間以内に、高カリウム血症が現れ、 少し遅れて 24~48 時間後にリン、カルシウム、尿酸が変動し、それ以後に血清クレアチニン値が上昇し急性腎不全が生じやすいとされています。

リン・カルシウムは、白血病治療開始 24〜48 時間に尿細管でのリン酸の再吸収率が 20〜70%に低下し、尿中の排泄が 3〜24 倍に増量するといわれています。尿細管でのリン酸濃度の上昇により、リン酸カルシウム塩の尿細管内析出がはじまり急性腎不全を生じます。

モニタリングはTLSが発症しやすい治療開始後から3日間以上行うことが望ましいとされています。

身体症状

高カリウム血症では筋力低下、知覚異常や嘔気、嘔吐などの消化器症状が生じます。また血清カリウム値が 6.5mEq/L 以上となると致死性不整脈が出現する危険性あるため注意が必要です。

その他には、体重、水分のin-outバランス、心電図、尿のpHなどをモニタリングすることが勧められます。

さいごに

TLSは患者さんの命に関わるものですので、体調の変化に早くに気づくこと、またTLSのリスクが高い患者さんを事前に把握しておくことが大切です。
日々の臨床の中でも出会うかもしれないTLSについてをしっかりと整理しておいて損はないはずです。

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こちらはあらゆるがんに対するリハビリテーションのことを記載されてある本です。がんの患者さんと運動療法を行うにあたっての注意点なども明確に記載されてあるので臨床で非常に役にたちました。
がん治療薬まるわかりBOOK
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